沢木耕太郎に憧れて…PC.スマホのない旅⑧爆弾テロ頻発!高熱に襲われる!タイ深南部ナラチワート

早朝にロットゥー乗り場へと向かう。
この頃には朝早い時間帯に移動する習慣がすっかりと身に付いて来ていた。
次の目的地での宿探しや移動も思いのほか時間の掛かるものだからだ。
もっとも目的地とは言っても明確な目的地を決めていた訳ではない。
現地で調達した地図を頼りに、おぼろげに決めていたのだ。
パッタニーからナラチワートへと向かう。

街の中心地であろう時計塔付近では多くの乗客がバンから降りた。
私はまだ降りずにいた。
乗客の少なくなった車内は快適だった。
いつの間にか眠りこけていた私は運転手に肩を叩かれ起こされた。
どうやら終点のようだ。
私が下車したその場所は……
賑やかな場所…
それ以外に具体的な場所は把握出来ないでいた。
途中で眠りこけていたからだ。
いつもなら地図を片手に、通りの標識やガソリンスタンドなどと照らし合わせて自分の場所を知る。
少しばかり辺りを彷徨いてみる。
昨日から続く発熱で普段の様に歩き回ることが出来ない。
とその時、若いバイタクの運転手から声を掛けられた。クマナ?
ここナラチワートはタイとはいえマレー系が多く住む土地でマレー語で話し掛けられる。
ホテルを探していると告げると…
彼は任せとけとばかりに、後部座席に座る様に促した。
風を切って走るバイタク…
右側前方に赤い提灯のある中華系のホテルが見える。
私は運転手の肩を叩きホテルを指差したが、彼は首を振りティダッ!と答えた。
まぁ運転手の紹介するホテルが気に入らなければ戻れば良い。
しばらく走ったバイタクはコンクリートに囲まれた敷地内へと入って行った。
お手製のブランコとコンクリートで出来たテーブルや椅子。
敷地内に入ると小さな小屋にタイ文字で書かれた小さな看板が出ていた。

一介の旅行者には宿なのか民家なのか見分けがつかない様な作りだった。
クーラー付きの部屋と扇風機だけの部屋がある様だった。
ヘジャブとサロン(腰巻き)を纏った女性はカタコトの英語で、具合の悪そうな私を見てクーラー付きの部屋を勧めてくれた。
その横でバイタクの運転手と談笑していた男性はしきりにレディ?レディ?と私に問う。
いゃいゃ興味はあるが、具合の悪い今の私には女遊びどころではない。
夜になって分かった事だが、この宿の裏手には数件の連れ出しの出来るカラオケ店があったのだ。
どおりでクーラー付きの部屋とレディを勧めてくれた訳だ。
次の日私はベッドから起き上がれないほどの倦怠感と高熱に襲われていた。
テング熱かマラリアか…その時の私は知る由もない。
やっとの思いで外にある離れの受付で宿泊延長の申し出をした。
数十メートル歩くのもしんどい。
外に食事に出る気力もなかった。
そんな私を見兼ねたのだろう。
昨日までしきりにレディ?と女遊びを勧めてくれた宿の主人がフルーツの盛り合わせを用意してくれた。
その後、数日間に渡って寝たきりの私にフルーツ差し入れをしてくれ続けた。
具合が悪いからと言ってもここに長いは出来ない。
と言うのもノービザの期限が迫っていたからだ。
(その当時のタイではノービザの滞在期間は14日間)
少しばかり具合のマシになった私は翌日の早朝にマレーシアヘと向う事を宿の夫婦に伝えると、
翌日、私をバイクで国境まで送ってくれた。

この宿の夫婦は最後まで大変親切にしてもらった。
今でも機会があればお礼に伺いたいと思っている。
観光地巡りをした訳ではないが、心に深く残る旅。
私には有名な観光地を巡る旅よりも価値のある旅であった。



グーグルストリートビューで見つける事の出来た、その当時お世話になった宿
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