沢木耕太郎に憧れて…PC.スマホのない旅④欲望の街

どの位の時間がたったのだろうか?
クーラーの無い窓を全開に開けたままのバスに揺られながら、いつの間にかぐっすりと眠り込んでしまっていたらしい。
ハジャイの市街地に入ったのだろう。
私を乗せた赤バスはそれまでと打って変わってのろのろ運転になっていた。
全開の窓からの心地好い風はすでに無くなり汗が額にまとわりついていた。
額の汗を拭いながら、私はぼんやりとどこで降りるべきだろうか?と考え始めた。
そうだ。多くの乗客が降りる場所にしよう。
そこは市街地の中心地近くに違いない。
そう考えた私は、多くの乗客が降りるその場所で降りる事にした。
辺りを見回すと道路の向こう側に大きな時計塔が見えた。
その左側には馴染みのあるコンビニの看板が見える。
そうだ。とりあえず地図だ。
地図さえあれば宿探しも容易に出来る。
そのコンビニで地図とミネラルウォーターを買った私は、時計塔の石段に腰掛け次に進むべき道を探した。
すぐに目的地は決まった。リーガーデンプラザホテルだ。
そのホテルはハジャイの繁華街の中心地にあるようだ。
地図にはその周りに沢山の飲食店や旅行代理店、商店などが記されていた。
時計塔からリーガーデンプラザホテルまでは地図上ではたいした距離がある様には見えなかった。
だが、ここは30℃を超える常夏の国タイ。
10分も歩くと汗びっしょりなる。
リーガーデンプラザホテル付近をよろよろと歩く私をバイタクやトゥクトゥクの運転手たちはレディー?と問う様に向かい入れてくれていた。
彼らの本業よりも女性をあてがう事の方が割が良いのだろう。
リーガーデンプラザホテルの裏通りの角にあるコンビニの前で、バイタクの運転手に中国語で話し掛けられた。ニーハオマ?レディー?
ここハジャイはマレーシア人やシンガポール人に人気の観光地らしい。
昼はショッピング、夜は歓楽街へ。
愛群旅社。愛が群れる宿か…その手の売春宿かと思ったが普通の宿のようであった。
宿自体はくたびれていたが立地が良くその上安い。
今夜はここにしよう。f:id:superhero999:20200409143522j:plain